『元朝秘史』の『源平の争乱シナリオ』をひたすら観戦してみた

■ 序

 『蒼き狼と白き牝鹿』シリーズ3作目『蒼き狼と白き牝鹿・元朝秘史』 (以下、元朝秘史)は1992年にPC-88/98で発売されて以来、様々な機種にマイナーチェンジを施されながら移植されたが、メガCD版(1993年)やPS版(1998年)では「源平の争乱」シナリオが追加された。全機種共通で存在する「モンゴル高原の統一」シナリオではテムジンやジャムカなどの族長たちがモンゴル統一を目指し、統一後は世界に打って出るという流れだが、「源平の争乱」シナリオはそれを源平合戦、1180年当時の日本に置き換えたものだ。当然、選択できるのは、源頼朝、平清盛、木曽義仲、藤原秀衡といった日本史上の有名人物で、プレイヤーは彼らとなって日本統一、そして世界征服を目指すことになる。

 以下、閑話。光栄(コーエー)の源平ゲームといえば「源平合戦」があるが同作の発売は1994年、メガCD版元朝秘史の発売は 1993年なのでこちらの方が1年早くなっている。わざわざ移植作のために源平関連の資料を集めたとは考えにくいので、1993年頃から「源平合戦」を制作していてその資料を流用した、あるいは同時期に放送されていた大河ドラマ『炎立つ』(1993-94年放送)に便乗しようとした結果これらの作品が作られた、のいずれかと推測される。閑話休題。

 さて、この「源平の争乱」シナリオの存在はWikipediaにも書いてあるし、レビューサイトでも触れられるなどある程度認識されているのだが、リプレイやプレイ動画の類が全くなかった。これらのバージョンの入手可能性や、源平合戦のゲーム題材としての人気を考えれば止む無しとも言えるが、戦国史シナリオで源平合戦シナリオを作ったりするなど(宣伝)源平合戦に一家言ある者としては、そのシナリオの詳細を世に知らしめたい。ただ、日本統一後の流れは通常シナリオの鎌倉幕府と全く同じで、プレイリポートを上げるだけでは芸がないので、観戦プレイを通じてこのシナリオの雰囲気、ありがちな展開などをまとめることとした。このレポートはその記録である。

■ 検証方法

 今回のレポートでは、PS版を使用した。シナリオを選択後、デモプレイを選択しその成り行きを観察した(戦闘は「見ない」を選択)。

 なお、このレポートでは「奥州」「常陸」「鎌倉」といった地名は、特に断りがなければゲーム中の名称を指す。未プレイの方にもわかるよう、マップを下のように再現した。なお、新田義重が越後で在野の人材として登場することから上野国はゲーム上で越後に含まれると思いきや、信濃と常陸が隣接したりしていて良く分からない状態になっている。そのため、ゲームと矛盾しないよう分割し表現した。他意はないのでご了解されたい(ちなみに筆者は上野国出身である)。



※蝦夷・淡路・隠岐・壱岐・対馬・
 琉球はマップ上に描かれていない
※信濃(4)-美濃(8)間、越後(3)-美濃(8)間は
 山脈に隔てられていて通行不可
番号ゲーム中の名称構成国所属勢力領主政治顧問
1奥州陸奥・出羽奥州藤原氏藤原秀衡(国王)

2常陸常陸・下野・
(上野)
常陸源氏佐竹秀義(国王)志太義広
3越後越後・越中・佐渡桓武平氏城長茂

4信濃信濃・(上野)木曾源氏木曾義仲(国王)

5鎌倉下総・上総・安房・
武蔵・相模・伊豆
清和源氏源頼朝(国王)北条時政
6東海甲斐・駿河・遠江・
三河・尾張
桓武平氏橘遠茂
7越前加賀・能登・越前・
若狭
桓武平氏平通盛(親族)平教経(親族)
8美濃美濃・飛騨桓武平氏平知盛(王族)

9近江近江・伊賀・伊勢・
志摩
桓武平氏平経盛(親族)
10畿内山城・大和・河内・
和泉・紀伊
摂津源氏源頼政(国王)源仲家
11福原摂津・播磨・美作・
丹波・丹後
桓武平氏平清盛(国王)平時忠
12四国讃岐・阿波・伊予・
土佐
河野水軍河野通清(国王)
13中国出雲・備前・備中・
備後・安芸・周防・
長門
桓武平氏佐伯景弘
14九州豊前・豊後・筑前・
筑後・肥前・肥後・
日向・大隅・薩摩
九州武士団菊池高直(国王)草野永平

 また、ゲーム中に登場する諸勢力も上の表に示した。各勢力のカラーは、ゲーム中で使用されているものを再現した。注意したいのは、通常プレイで各勢力ごとに設定される配下武将や、各国ごとに設定された在野武将はCOM勢力は使用しないことだ。つまり、デモプレイ中には源義経・武蔵坊弁慶主従や平家一門の数々は登場せず、登場する史実武将は上記の表にいる20名がすべて、ということである。そして彼らもまた、無尽蔵に登場する架空武将に置き換えられていく運命にある。それでは、その結果をお示ししたい。

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