『元朝秘史』の『源平の争乱シナリオ』をひたすら観戦してみた

■ 観戦結果・総評

 計32回観戦して、統一した勢力、統一時期ごとの統一勢力をそれぞれまとめた。詳細な観戦内容は、テキスト量が膨大になったので別ページに記載した。

○ 勝利回数・勝率

    桓武平氏  20回(62.5%)
    清和源氏  5回(15.6%)
    九州武士団 3回(9.4%)
    反乱勢力  3回(9.4%)
    決着付かず 1回(3.1%)



○ 年代ごとの勝利回数

            1180年〜1190年 2回(6.3%)
            1191年〜1200年 12回(37.5%)
            1201年〜1210年 4回(12.5%)
            1211年〜1220年 3回(9.4%)
            1221年〜1230年 4回(12.5%)
            1231年〜1240年 2回(6.3%)
            1241年〜1250年 1回(3.1%)
            1251年〜1260年 1回(3.1%)
            1261年〜1270年 1回(3.1%)
            1271年〜1340年 0回(0%)
            1341年〜1350年 1回(3.1%)
            決着付かず 1回(3.1%)

 最も多いのが、平氏が当初の勢いを維持したまま西国を制覇し、東国の諸勢力を撃破して統一するパターンだった。このパターンのピークは1200年代、最速で1189年だった。

 九州武士団の討伐失敗、反乱多発などで平氏の伸びが悪かった場合には、上記のパターンからは外れていく。概ね、諸勢力に混戦に持ち込まれ(その中には反乱を起こして生き残った勢力も含まれる)、混戦を制した勢力が統一することになる。こちらのパターンのピークは1230年代だろうか。源氏による統一が二番目に多いのも源氏自体が強いからというよりは、混戦状態になった時点での生存確率が開始時の国力・戦力・勢力配置などの条件のために少し高くなったから、と推測される。

 このように、本シナリオの観戦結果は上記2パターンに大別された。14ヵ国中7国を掌握する平氏といえども、初期の勢いのまま統一するパターンに持ち込めるのは約5/8の確率に過ぎないのは興味深い。展開のままならなさや諸勢力の浮き沈みを眺めたり、後述の通りにCOMの思考のクセに気が付いたりできるのが、こうした観戦プレイの醍醐味であろう。

 コーエーの歴史シミュレーションゲームにはデモプレイ機能がしばしば搭載されており、過去には観戦プレイを攻略本で推奨したこともあった。ただ、一回の観戦に時間がかかることから、やってみたはいいものの統一を見ることなく中断した方もこのレポートをお読みの方にはおられるのではなかろうか。今回のレポートが可能だったのも、拠点数が少なく一観戦あたりの時間が早ければ10分以内で終わったことが大きいだろう。今回のような観戦プレイを楽しむファン層も少なからずいると思われるので、メーカー各位にはデモプレイ機能に加えて一時中断機能や途中セーブ機能を付けて頂けるよう望みたい。

■ ありがちな展開

 下記に、本シナリオでよく見られた展開を載せる。中にはCOMの施行ルーチンの産物と思しき展開もあり、他シナリオでも見られる可能性がある。

○ 序盤(地方平定まで)

・鎌倉の源頼朝が常陸に攻め込む。
 ターンの回り方次第で、義仲・秀衡が先に攻め込むこともある。どっちにしても、常陸攻めで戦力をすり減らしたところへ他の二者が攻め込み、敗れた有名武将がゲーム上から早々に退場するのを目にすることになる。

・奥州の藤原秀衡が、常陸か越後に攻め込む。
 越後に攻め込んだ場合は、

 清和源氏:鎌倉→常陸→奥州
 木曽源氏:信濃→鎌倉
 奥州藤原:奥州→越後→信濃

 といった具体に、他所に攻め込んで手薄になった領地へ攻め込まれて、領地を入れ替えてまでこれら3勢力(以下、東国三勢力と呼ぶ)が相争うことが多い。平氏軍(主に越前の平教経・東海の橘遠茂)にまとめて潰されることも少なくない。

・福原の平時忠が畿内に攻め込んで、摂津源氏を滅ぼす。そのまま四国に攻め込んで、河野水軍を滅ぼす。
 更に九州にも侵攻するが九州武士団に必ず勝つとは限らず、逆に反攻を許すこともある。ここが展開の分岐点の一つだろう

・平清盛は1180年代に寿命を迎える。後継するのは自動生成の架空武将。
 ここでも書いたようにプレイヤーのモチベーションを大いに下げてくれる現象だが(他勢力で平家打倒を目標にプレイ中に起きると尚更のこと)、当主が領地に攻め込まれて敗北して処断されると、美濃の平知盛あるいは近江の平経盛が後継することがある。

○ 中盤以降(全国統一まで)

・一番多いのは、四国・九州を攻略して西国を平定した平氏が、東国の諸勢力を撃破して統一するケース。

・東国三勢力のうちのどれかによって東国が統一された場合、平氏の状況次第では、平氏を打倒して統一することがある。

・九州武士団がわりと粘る印象がある。
 畿内→四国と攻め込んできた平氏軍を跳ね返し、逆に攻め込んで西国一体を支配下に置くことも珍しくはない(そのまま統一することも)。どうやら端にある勢力がCOMの思考ルーチン上有利になっているようだ。同様の挙動は、九州で旗揚げした反乱軍でも見られた。

・越後の城長茂、東海の橘遠茂、中国の佐伯景弘は、観戦しているとしばしば裏切って展開を引っ掻き回すのを見かける。

・COM勢力の思考ルーチンとして、数字が若い方の国を攻める傾向があるように見える。
 九州武士団が平氏領を一路東進して鎌倉に拠点を移したり、関東の勢力が奥州攻めを優先して引きこもったりといったことが散見された。

・架空武将が当主の時に、まったく他国に攻め込まないことがたまにある(観戦13回目のケースなどが該当する)
 おそらく能力が足りないか行動力が足りないかのどちらかなのだが、
 (1) 兵数の少ない隣国を、少数の兵を本国に残して攻め取る。
 (2) 本国の兵数が減ったために、別の隣国に本国を攻め取られる。
 (3) (1)と(2)を繰り返すうちに兵力をすり減らし、攻め込まれて滅亡。
 という、本作のCOM勢力にありがちなパターンに陥らずにすむためか、意外と生き残る。
 しかし、そうして生き残ったにもかかわらず、当主が病死して新しい当主になった次のターンで隣国に攻め込んで、@〜Bのループにはまり込んで滅亡、となることが多い。どうして、どいつもこいつも考えなしに攻めようとするのか。

■ 最後に

 結局のところ、COM勢力統一時にシナリオ開始時の当主が存命していることは稀で、どこが統一しようがおおよそ自動作成の架空武将が当主となっている。そこには、史実で名を馳せた源氏の武者たちや平家の公達たちの姿は、無い。レポートの趣旨を否定するようなことではあるが、このゲームでは「どの勢力が勝った」と言うこと自体に大した意味はないのかも知れない(なお、きちんとプレイヤー勢力でプレイする分には、初期の配下武将や在野武将など史実人物をきちんと使えることを付け加えておく)。

 あれこれ文句を言うことに代えて、『平家物語』の一節で締めさせて頂く。

  「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり

   沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす

   驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し

   猛き人もついには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ」



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