架空人物命名システム(子供編)

 本ゲームを進めていくと、妃との間に子供が産まれることがあり、名前の入力を求められる。全部自分で名付けるという方も居るだろうが、オートで命名することも出来る。この方法は、COM勢力でも用いられている。

 さてこのオート命名は、娘の場合は妃の出身地域に準じた命名がされ娘本人の出身地域も妃と同じものになるが、王子の場合は国王の出身地域に準じた命名がされ、なおかつ出身地域は国王か妃のいずれかを選択できる。これはつまり、本人の出身地域と名前が一致しない「混血武将」が登場する可能性があるというころだ(具体的には日本人風の名前をもつ中国出身武将が登場しうるということ)。COM勢力は王子の出身地域を妃と同じにする事がたまにあるので、実際にそうした武将を見たことがある方もいるだろう。

 では、このような「混血武将」が自分の子供に名前を付ける時はどうなるのだろうか?そうした疑問から、様々な状況を用意して子供の名前を検証してみた。なお、今回は様々な名前の国王を手軽に試せるPC版で調査しており、PS版とは異なる可能性がないとも言えないのでご容赦されたい。


■日本

 この調査では、新国王として作成した架空武将とシナリオ開始時に配置されている国王や武将(婿にしてから国王に)を使うことにする。外国風の名前をもつ架空武将を用意する事で、先に述べた「混血武将」が再現できるというわけだ。なお、この調査は「混血武将」がシステム上特別扱いされないという仮定のもと行っている。

 まず日本出身武将について実験してみた結果、下のリストの通りとなった。○△は個人名にあたる部分で、一文字目を○、二文字目を△で表している(過去のレポートも参照のこと)。

国王の名前王子の名前候補
(1)王(架空武将)任意の名字+○△
(2)楊大(架空武将)楊大○△
(3)源頼朝(S1初期国王)源○△
(4)源頼朝(架空武将)源○△
(5)平清盛(架空武将)平清○△
(6)北条泰時(S1現役武将)北条○△
(7)武蔵坊弁慶(S1現役武将)武蔵○△
(8)伊東マンショ(架空武将)伊東○△
(9)原マルチノ(架空武将)原マ○△
(10)リチャード1世(架空武将)任意の名字+○△

 まず、(1)のように国王の名前が漢字一文字の場合。プレイヤーが故意に起こさなければ発生し得ない状況だが、この場合は日本文化で提案され得るあらゆる名前が提案された。一方、(2)のような漢字二文字の場合はその二文字が名字扱いされた。漢字二文字の方は、たとえば中国の君主と日本出身の后との間の子として登場する可能性があるので、こちらは出現する可能性はゼロではないだろう。

 次に漢字三文字の場合。このあたりからCOM勢力で見られる可能性が現実的になってくる。(3)(4)のように「源」が名字の場合はきちんと名字として認識されるのだが、(5)では「平」が名字として認識されず、最初の二文字が苗字扱いされてしまっている。名前が漢字四文字以上の場合は、(5)(6)のように一律最初の二文字が名字扱いされるので、システム上は日本出身武将については最初の二文字のみ子供に引き継がれるという設定がされていると推測される。源氏のみ特別扱いされるのは、S1で源頼朝が初期国王として子供を作る可能性があるのが理由だろう。しかし、これではS2に現役武将として存在する平頼綱が国王になる可能性があまり考慮されていないし、朝鮮・中国風の漢字三文字の名前を持つ「混血武将」が国王になった場合も、(5)で示したような先代の名前が名字に取り込まれた奇妙な名前になってしまう。名字と個人名を分けて扱わないが故の問題だろう。

 また、漢字とカナが混在している場合も調べてみた。最初二文字が漢字の場合は(8)のように最初の二文字が名字扱いされるし、完全にカナ文字の名前場合は(10)のようにランダムな名前が提案された。
 (9)のような「一文字の名字」+「カタカナ名」の場合はというと、

「一文字の名字」+「カタカナ名の最初の一文字」+「漢字二文字の個人名」

 という、なんとも奇妙な名前が提案された。(まあ、混血の王子にこうした名前を手動で付けて後継させない限り起きないケースだが…)。

 以上のことから、日本出身武将については下のように言える事が分かった。

システム上は、名字と名前を分けて扱っていない。

・王子を命名する際は、二文字以上の名前で、かつ一文字目が漢字ならば、最初の二文字が名字として認識される。そうでなければ完全ランダム。

・ただし、源姓は特別扱い。


■朝鮮・済州島

国王の名前王子の名前候補
(1)王(架空武将)任意の名字+○△
(2)北条泰時(架空武将)北○△
(3)明宗・元宗(S1・S2初期国王)王○△
(4)恭愍王(S4初期国王)恭○△
(5)明宗(架空武将)明○△
(6)リチャード1世(架空武将)任意の名字+○△

 国王が朝鮮・済州島出身の場合は若干シンプルで、(2)のように基本的に最初の漢字一文字が名字として使用される。それに対して(6)のように最初一文字が漢字でない場合は、完全ランダムな名前になる。

 なお、S1・S2の初期国王はシステム上の特例か王子には(3)のように王姓の名前が提案される。これは、高麗王朝の君主の姓が「王」だという史実に沿ったものだ。しかし、PK版で追加されたS3・S4ではその特例措置を適用し忘れたのか、(4)のような事態になってしまった。また、架空武将でS1・S2の初期国王の名前を使っても、(5)で示した通り特例は適用されなかった。

 以上のことから、朝鮮出身武将については下のように言える事が分かった。

・王子を命名する際は、二文字以上の名前で、かつ一文字目が漢字ならば、最初の一文字が名字として認識される。そうでなければ完全ランダム。

 こうした仕様は先に述べた日本のものとは異なっている。こうした地域ごとの子供命名システムの違いはそれぞれの地域の特色を再現する上では有用だが、「世代交代によって君主の文化が変わった結果、名字が引き継がれない」事態を招く可能性がある。
 たとえば、S2の鎌倉幕府において、

北条時宗(日本出身・S2初期国王)
  ↓
北条実信(朝鮮出身・北条時宗の架空王子)
  ↓
北大中(日本出身・北条実信の架空王子)

といった感じに世代交代した場合、「北大中」の子供の名前は「北大○△」となり、「北条」という名字が受け継がれなくなってしまう。こうした事態はCOMでも起き得る、すなわちプレイヤーが目にする可能性のある事なので(2回世代交代が起きるほどゲームを続けていればの話だが…)、十数年前のゲームとはいえこの点はもう少し考慮しても良かったように思う。


■中華(華北・華南・台湾島・海南島)

国王の名前王子の名前候補
(1)王(架空武将)
(2)弁慶(架空武将)弁△
(3)楊大(架空武将)楊△
(4)楊大明(架空武将)楊大△
(5)司馬大(架空武将)司馬△
(6)源頼朝(架空武将)源頼△
(7)平清盛(架空武将)平清△
(8)文天祥(S2現役武将)文天△
(9)北条泰時(架空武将)北条○△
(10)武蔵坊弁慶(架空武将)武蔵○△
(11)孝宗・度宗(S1・S2初期国王)趙○△
(12)章宗(S1初期国王)完顔○△
(13)高宗(S1初期国王)李○△
(14)聖宗(S2初期国王)陳○△
(15)芸宗(S4初期国王)芸△
(16)原マルチノ(架空武将)原マ○△
(17)リチャード1世(架空武将)任意の名字+○△

 中華四地域については、上記リストの通り。(1)〜(8)を見るに、名前が漢字三文字までの場合は最後の一文字を削って任意の一文字を加えるといった感じに命名されるようだ。一方、(9)(10)のような漢字四文字以上の場合は最初の二文字のみ子供に受け継がれた。(16)のような漢字カナ交じりの場合は最初の二文字が漢字カナ関係なく使用され、(17)のような完全にカタカナ名の場合はまったくランダムな名前が提案された。

 また、S1・S2の初期国王は(11)〜(14)のようにそれぞれ史実に応じた姓を持つ名前が提案された。武将登用で出現する架空武将は個人名の部分が漢字一文字だったり二文字だったりするが、初期国王の子供に限っては二文字のほうで統一されていた。なお、S3・S4の初期国王の子供には史実に応じた姓が用いられなかった。この辺の事情は、朝鮮と同様のようだ。

 以上のことから、中華出身武将については下のように言える事が分かった。

・王子を命名する際は、三文字以下の名前で、かつ一文字目が漢字ならば、最後の一文字だけ変えた名前が提案される。四文字以上の名前で、かつ一文字目が漢字ならば、最初の二文字が名字として認識される。一文字目が漢字でなければ完全ランダム。


■それ以外の地域

 本ゲームの東アジア地域以外では、カタカナを用いた名前が使われている。この場合、たとえ父親が漢字を使った名前を持っていても、東アジア以外の文化に属する限りは子供が父親の名字を引き継がれないようだ。


■まとめ

 今回の調査を行ってみて、長年このゲームに関わりながら初めて知った仕様もあり、それぞれの地域にふさわしい子供命名システムを作るべく製作者側が様々な工夫を行った痕跡をうかがい知ることが出来た。実際、これらのシステムはその地域内で完結している分にはいくつかの例外はあるものの上手く機能していると言えるだろう。
 しかし、世代交代を重ねて国王の出身地域が変わると命名関連の動作がおかしくなる等、名前と個人名を分けて扱わない故の弊害がある事から、「やはり、名字と個人名は別々に管理するべきでは」と思わざるを得ない。この点については、改善案のページ(現在準備中)にて改めて述べたいと思う。


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