『信長の野望』における架空人物命名システム(武将編)
(注)現在調査中につき、ここの内容は暫定的です。予告無しに変更する可能性があります。
また、調査には各作品ごとに現存する全ての版で確認しているわけでないので、
他版との差異が存在する可能性があります。
■全国版の架空大名
大 小 上 下 中 高 前 内 外 北 西 黒 月 水 金
阿 伊 木 杉 松 竹 池 江 島 土 石 宮 吉 丸 横
+
藤 本 葉 岸 崎 辺 川 河 沼 瀬 淵 口 田 原 平
野 村 町 井 場 屋 寺 倉 城 坂 谷 岡 山 越 部
+
頼 隆 孝 義 盛 兼
+
【大名死亡後に当該大名の遺領に一番目に登場した場合は、
死亡した大名の個人名の二文字目を引き継ぐ。
それ以外の場合は、以前に滅亡した大名の個人名の二文字目を引き継ぐ】
『信長の野望』シリーズは光栄時代から通算して、現在十余作が登場している。今でこそ多彩な戦国武将がゲームに多数登場しているが、最初期の作品では配下武将の概念が存在せず登場するのは大名だけだった。そして、その大名が死亡したり一揆や謀叛で新勢力が誕生したりすると、ランダムで名前が決定された架空人物が新大名として登場することがある。恐らくこれが光栄史上初めての架空武将だと言えるだろう。
FC版ではこれらの大名は「うちしろ」「きたきし」「かねこし」といったように全部ひらがなで名字だけの登場だった。しかし、後発のSFC版(SUPER信長の野望全国版)では史実大名がフルネームでの登場になるとともに、架空大名にも個人名が付くようになった。
そこで、これらの架空大名の名前について調べてみたところ、上のような仕様であることが判明した。こうした処理は、後述の群雄伝でも有能な武将が死亡した後に能力を引き継いだ架空武将が登場するのと同様のものと考えられる。こうした点から、新規に大名を登場させる時は、現在使われていない大名情報を一文字残してリネームした上で使いまわすという内部的な処理をしているのでは、と推測できる。
なお、個人名の一文字目と二文字目に同じ文字が使われる事がたまにあり、「隆隆」「頼頼」といった奇妙な名前になってしまうので、注意が必要だ。
■群雄伝の架空武将
大 小 上 下 中 高 前 内 北 西 黒
伊 木 杉 松 竹 池 江 島 土 石 宮 吉
+
藤 本 岸 崎 川 河 沼 田 原
野 村 井 寺 坂 谷 岡 山 部
+
義 頼 隆 忠 直 兼 盛 正 基 孝 茂 豊 貞
+
信 長 秀 康 昌 幸 忠 輝 直 政 孝 頼 盛 重 親
景 広 綱 晴 元 弘 隆 高 定 道 正 実 照 昭 竜
前作ではあくまで史実大名の補充としてのみ登場だった架空武将だったが、本作では配下武将の概念が初めて登場し、在野武将探索で架空武将を登用できた。こうした仕様は、前にも後にも群雄伝だけであった。まだこの頃は武将の調査や発掘が進んでいない状況と思われ、覇王伝からこのシリーズに入った筆者にとっては、最有力である織田家の陣容でさえも物寂しく感じられた。だから、武将不足を補う為に、こういった措置を取るする必要があったと考えられる。悲しいかな、『蒼き狼』シリーズは未だにこの段階に留まっている。
ここで名前の要素を見てみると、「戦国武将っぽい」名前の再現が出来てない、もしくは「わざと」していないような気がする。敢えて要素を上のように並べたが、四文字目に使われる文字同士で作れる名の方が有名人物の名と同じものになることがお分かり頂けるだろうか。「戦国武将について調査が進んでない段階なので、要素も適当に作った」とも考えられるだろうが、有名人物と同じ、もしくは類似した名前が登場しないように「わざと有名な名前が登場しないように」命名システムを構築したとも考えられるが、どうだろうか。
補足するが、三文字目のと四文字目の候補の両方にに「頼」「隆」「正」の字が入っているがこれはミスではなく、これらの文字が三文字目にも四文字目にも現れ得るのだ。ただ「頼頼」「隆隆」という名前は調査の中では見つけられなかったので、予めこういった名前を排除するようプログラム側で設定されているようだ。
■将星録の農民
農民
+
博 健 征 和 裕 越 正 亮 雄 織 豊 佳 樹 夏 巻 文 千 典 彦
+
太 一 次 三 五 六 七 平 介 助 吉 作 蔵 兵衛
箱庭型マップを採用した将星録においては、一向一揆や農民一揆はマップ上への軍事ユニットの出現として表現される。そして、その部隊指揮官の名前は一定の規則に従って、名付けられる。これも一種の架空武将だろう。
農民一揆の指導者の名前は全国一律で、上の通りB型。戦国期の農民の名前として何処となく不自然さが漂うが、まあ何とかうまく作った方だと思う。何処が気に入らないか具体的に言うと、一文字目のラインナップだろう。「織」「越」「樹」「巻」は二文字目に何を持ってきてもしっくり来ないと思う。
■将星録の僧侶
僧侶
+
博 健 征 和 裕 越 正 亮 雄 織 豊 佳 樹 夏 巻 文 千 典 彦
+
心 月 知 伝 雲 寿 軒 海 無 誉 念 海 庵 哲 順 斎
一向一揆の指導者の名前は前項同様にB型。こうして見ると、名前一文字目が農民の場合と同じ、むしろ流用していると言える。二文字目が戦国時代に活躍する僧侶(「天海上人」「以心崇伝」など)から採っている為に、生成される名前が僧侶の名前(厳密には「名前」ではないが)には辛うじて見えるのだが……。こういったいい加減さが、製作者側の「架空武将は所詮、『仮の存在』」という考えを現していると感じる。
■烈風伝の足軽頭
足軽頭
+
映 越 覚 幹 起 恭 慶 健 吾 光 宏 康 剛 克 樹 準 純 尚
真 仁 征 政 正 智 道 博 彦 武 歩 巳 祐 裕 雄 亮 良 和
+
太 一 次 三 五 六 七 八 平 介 助 吉 作 蔵 兵衛
烈風伝では、攻城戦にて守備側に十分な数の武将がいない場合、守備隊ユニットの指揮官として足軽頭が登場する。この足軽頭の名前は上の通りだ。名前の傾向は将星録の農民に準じつつも、バリエーションはよりも豊かになっているようだ。
■その後の展開
このレポートを最初に製作してから数年経ち、『信長の野望』シリーズの方でも変化があったので補足も兼ねて加筆する事にした。
同シリーズでは大名が後継者を残さずに死亡すると、過去の作品では血縁の無い家臣から後継者を選ぶことが多かったが、近年のものでは「遠縁の人物」と称して大名の名字を受け継ぐ架空武将が登場して後継者となるようになった。
それに加え、2010年の時点で最新作である「天道」では、従来の姫武将に加えてコンピュータ側で自動作成された「架空息子」が登場するようになった。これで、血縁の居ない大名でも家名断絶の危機を気にせずプレイが出来るようになるのだ。こうしたシステムは、過去作では史実上の人物と紛らわしいとの意見があったのか採用されていなかったが、シナリオ開始時にオンオフを選択可能にする事によって可能になったようだ。
こうして出現する「架空息子」の名前については、既にまとめたページが存在するのでこちらを参照されたい。見てみると、ゲームに登場する史実武将の個人名を持ってきているのがよく分かる。こうした仕様はシステムソフトの「天下統一」でも見られたのでそこまで目新しいものではないが、戦国時代の人物の名前としてはおかしい物では無いので、堅実な方法といえるだろう。
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