未使用曲の謎に迫る

□謎の曲Track5

 PC版の蒼き狼と白き牝鹿IVをお持ちの方には今更な話かと思われるかもしれないが、このゲームのPC版には未使用曲が存在する。ゲームCDの5番目のトラックに入っている曲がそれで、蒙古文化圏のテーマ(4番目のトラック)とインド文化圏のテーマ(6番目のトラック)の間に入っている。ゲームCDをお持ちの方で聴いたことの無い方は、良い曲なので是非聞く事をお勧めする。なお、この曲に限らずこのゲームの楽曲の正式タイトルは不明なので、以下の話ではこの曲を以後Track5と呼称する(他の曲も同様)。

 さてこの曲、PS版ユーザーならば実は既に聞いたことがある方も居るだろう。実はPS版では、自勢力がある程度大きくなっている時に蒙古文化圏の都市に国王がいると、本来の曲(Track4)に代わってこのTrack5が流れるようになるのだ。
 筆者も何度かはゲーム中で聴いた事はあるのだがこの曲が流れる時の詳しい条件は分からなかったので、ネタも無いから条件について調べてみる事にした。

□Track5出現条件の検証(PS版)

 調査方法は至って単純。複数勢力でプレイして脅迫で領有する都市を一つ一つ増やしていくというもの。
 この方法で、ケレイト(国王:トオリル=ハーン)の都市数を増やしていったところ、都市を10個領有した時点で国王が蒙古文化圏の都市にいるとTrack5が流れるようになった。この状態から廃都して所有都市を9個に減らすと、次のターンから元のTrack4が流れるようになる。この事から、Track5への音楽変更が行われるには都市を10個以上所有している事が必要条件だと言える。

 国王自身の条件についても調べてみた。上記の実験では、国王はトオリル=ハーン。蒙古出身で、音楽がTrack5になった時点で62歳だった。それでは、出身文化圏も年齢も異なる国王がいる勢力ではどうなるだろうか。そう思って、金(国王:章宗(中国文化圏出身、20歳台))でも同様に検証してみたところ、前回同様に都市を10個領有して蒙古文化圏の都市に入城した次のターンでTrack5が流れるようになった。思えば、筆者がこの曲を最初に聞いたのは源頼朝でプレイした時だった。どうやら、国王の文化圏や年齢はTrack5の出現条件には関係ないようだ。

 以上から、PS版でTrack5を聴くための条件は下記の通りだと一応は結論を出しておく。もし違う条件で流れたという連絡があれば、ご一報を。

・自勢力が都市を10個以上領有している。

・国王が蒙古文化圏の都市にいる。

・国王の年齢や出身文化圏は、おそらく無関係。

□失われた本来の用途

 このようにPS版では条件を満たすことで蒙古文化圏でTrack5が流れるのだが、この曲が本来どう使われる予定だったかについてははっきりしない。蒙古文化圏のテーマ(Track4)とインド文化圏のテーマ(Track6)に挟まれているので、どこかの文化圏のテーマとして作られた事はほぼ確実と見ていいが、それがどこかについては、推測する他無い。

 一応、出所は不明なものの「東南アジアで流れる予定だった」との説もネット上の掲示板で言われる事もある。筆者の手元に論拠となる資料が無いのではっきりと肯定や否定は出来ないが、東南アジアに属する勢力が全シナリオともに一つしかない状態を考えると、わざわざ独立文化圏として分ける意義が感じられない点が論拠として弱いように感じられる。(「だから文化圏ごとボツになった」とも言えるだろうが)。

 筆者の予想としては、前作である元朝秘史では存在しながら本作では削除された「内アジア文化圏」に使用するつもりだったのではないかと考える。
 今まで当サイトのレポートで見てきたように、本作では地域の区割りや名前の候補など前作での要素を多く引き継いでおり、「内アジア文化圏」を残すことも本作の製作段階では想定されていたというのは十分に考えられる事である。
 しかし「内アジア文化圏」とはいうものの、その実態は仏教徒の多いチベットとイスラム教徒の多い中央アジアからなり、ユーラシア中央部の遊牧文化圏からモンゴルを除いた余り物の寄せ集めという観があったため、独立した文化圏として扱えるかどうかは微妙なところであった。
 そうしてその後、文化圏の見直しが行われた際に「内アジア文化圏」が解体されてチベットは中国文化圏に、中央アジアはイスラム文化圏に移されたため、「内アジア文化圏」のテーマ曲として使われる予定だったTrack5が未使用曲となったのではないか、というのが筆者の予想する背景である。
 当然、この仮説は蒼き狼と白き牝鹿IVに残る前作要素から推定したものであり、何らかのソースに拠って書いているものではないことを断り書きしておく。そういうわけでこの未使用曲について書かれた詳細な文献をお持ちの方が居たら、下記の連絡先までぜひご一報を。


連絡先 : hjkz_src■hotmail.co.jp (スパム対策のため@を四角に変えて表記)

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