架空人物命名システム(女性編)

 蒼き狼IVにおいて女性は、君主の后や娘としてのみ登場し、国家を治めたり武将として部隊を率いたりすることは出来ない。確かに中世のこの時代に女性が将軍として戦場に立った例は希少だろうが、父や兄、夫の地位を継承して君主となった女性が実在したこともまた事実だ(例として、マムルーク朝初代スルタン、ジャジャル=アッドゥッルが挙げられる)。また、ゲーム続行可能なのは1500年までだが、かのジャンヌダルクは15世紀の人物なので女武将制度なくしては彼女の再現は不可能なのだ。次回作が出るならば、女性もまた武将や世継としてゲームに登場出来るようにしてもらいたいものだ。


■日本

愛 葵 茜 梓 綾 瓜 乙 夏 華 霞 菊 鞠 橘 弓 響 
琴 薫 桂 月 源 光 紅 彩 桜 皐 紫 雫 珠 秋 淑 
春 渚 織 榛 雀 星 清 雪 千 鷹 朝 潮 蝶 椿 笛 
冬 桃 藤 徳 楢 忍 巴 百 楓 風 鳳 睦 摩 万 妙 
霧 唯 夕 葉 遥 陽 淀 緑 鈴 恋 漣 蓮 露 菫 雉 
霰 鶯 京 白鷺 雲雀 朱鷺 如月 弥生 千歳 

御前 姫

 女性の命名システムもA型からC型までのどれかに分類されるようで、日本ではB型となっている。厳密には「御前」と「姫」は敬称であって名前ではないのだが、君主と后の会話で后に呼びかける時には「御前」「姫」込みで呼びかけることから、プログラム上は名前の一部として認識されているようだ。また、「御前」は身分の高い女性に付けられる敬称で、君主の代替わりの際に自動作成される后に付けられることはあっても、娘の名前に「○御前」と提案されることは無い。

 「バリエーションが多様過ぎないか」とか「平安時代から連綿と存在していたはずの『○子』という命名形式が無視されている」とかそういう批判もあるだろうが、機能としての問題は無いと思われる。ただ、理論上「巴御前」が登場する可能性があることについて、製作者側の含意はあるのかないのか……。

 ところで、プレイのしようによっては日本文化圏の姫を作りすぎて名前候補が尽きる事態も十分に考えられる。こうした時どうなるかというと、任意のカタカナ数文字+「姫」といった名前で命名されるA型の命名法が使用されるようだ(未確認)。


■中華(華北・華南・台湾島・海南島)・朝鮮・済州島

永 華 恭 月 光 沙 慈 順 昭 正 太 美 陽 

穏 貴 輝 興 恵 真 仁 智 天 徳 明 憂 蘭 

公主 妃

 チベットを除く中国文化圏でも、女性の命名法はB型だ。「公主」は日本語の「姫(ひめ)」にほぼ相当する。当然ながら、「妃」は君主の代替わりの際に自動作成される后に付けられることはあっても、娘の名前に「○△妃」と提案されることは無い。ちなみに筆者は、世界三大美人の一人とよく似た名前の「陽貴妃」をゲーム中で目撃したことがある。


■蒙古・チベット

パ行音、拗音、促音、長音、「ヴ」、「ヂ」、「ヅ」、「ヲ」を除く任意のカタカナ1文字or2文字
(1文字目のみ「ン」不可)

アン トリ ラン リク リチュ リン ルク ルクナ ルチェ ルン 

 蒙古の女性名はA型。これはチベットにも適用される。ちなみに、過去のシリーズには蒙古高原統一を目指すシナリオがあって、多数の部族とその族長、そして彼らの后がデフォルトで設定されていた。そういった后の大半は架空人物なのだが(デフォルトの族長達の中でさえ架空人物が存在した)、彼女らの名前には元ネタがあってテムジンの祖先たちの名前(の一部)から借用されているのだ。その中には男性名も含まれているので最善の選択ではなかったのだが、デフォルトの人名にせめてモンゴル語の人名を付けようという努力があったと思われる。

補足:過去作品での后データは こちらこちら。テムジンの祖先の系図はこちら
   (コンテンツへの直接リンクは好まれないので、それぞれtopページにリンクしています)


■インド文化圏

パ行音、促音、「ヴ」、「ヂ」、「ヅ」、「ヲ」を除く任意のカタカナ1〜3文字
(「ティ」「トゥ」「チャ」「チュ」「チョ」、長音「ー」を含む。1文字目のみ「ン」「ー」不可)

シャナ ティ ハール ラータ 

 インドや東南アジア一帯の女性名はA型。


■イスラム文化圏

パ行音、拗音、促音、長音、「ヴ」、「ヂ」、「ヅ」、「ヲ」を除く任意のカタカナ2文字or3文字
(1文字目のみ「ン」不可)

イダ ザード ティマ リーン 

イスラム圏での女性名もA型。


■東欧文化圏・西シベリア・東シベリア

C型
アテナ     アナスタシア  アニエス    アニータ    アニーチェ   アレイシア   
アレクサンドラ アンソニア   イリア     イレーネ    エリーズ    エリン     
エルトリーチェ エルヴィア   エヴァ     エヴィア    オイフェミア  オザリア    
カザリン    カサンドラ   カーシャ    カタリナ    ガブリエラ   クラウディア  
コンスタンシア サラ      サロメ     サンドラ    シグリア    システィア   
ジョジュ    シンシア    スターシア   セシリア    セヴィリア   ソニア     
ソフィア    ゾラ      タチアナ    ダリア     テリエーラ   テレサ     
ナターシャ   ナディア    ニキータ    パンドーラ   ビアンカ    フィアナ    
ブラディカ   プリシア    プレミア    ヘレナ     ボジェナ    マライア    
マリアンヌ   マリーヤ    マルタ     ミカエラ    ミランダ    ミルディア   
ミュリエラ   ユリアン    ユリア     リリス     レイビア    ロザミア    
ロレーナ    ヴァレリアン 

A型
パ行音、拗音、促音、長音、「ヴ」、「ヂ」、「ヅ」、「ヲ」を除く任意のカタカナ1文字or2文字
(1文字目のみ「ン」不可)

アンヌ シア ドーラ リーチェ リクス

 ヨーロッパは文字として残されている史料が豊富なので、C型の命名システムの作成が容易なようだ。東欧文化圏の女性名として上のような名前候補が提示される。これらはギリシャ語とロシア語を基調にしてはいるものの、英語、フランス語、ドイツ語が混ざっている。こういう点にこだわる人なら、娘の命名時に名前の選別をすれば済むが、自動作成される后の名前についてはお手上げだろう。ただ、その后の育った文化背景や家系について各自で「脳内補完」する余地があるとも言える。

 上に示したA型の命名法は通常のプレイでは目にする頻度は少ないが、C型の名前候補の残りが少なくなってきた頃から、名前候補にこのA型の命名法で作られた名前が混じるようになる。これは、西欧文化圏でも同様。

 ところで、シベリアの女性名も上のリストから選ばれる。このゲームのシベリア地域はチベット同様に、所属する文化圏の中では他の地域から「浮いている」存在だ。男性名は地域によって異なる一方で、女性名は文化圏単位で決まっているようだ。しかし、このように、表示される文化圏と女性の命名法則の上での「文化圏」とが必ずしも一致するとは限らない。文化圏と言語圏がイコールではないことを表現しようとしているのかも知れないが、このゲームの文化圏の区割りの基準、ひいては「出身地域を設定しているのに更に文化圏を設定する」意義がますます分からなくなる。


■西欧文化圏

C型
アイリーン   アンリエッタ  イザベラ    イザベル    イリス     ウィルヘルミーネ
エマニエル   エーメ     エリザベス   エリザベート  エリス     エレーヌ    
エレノア    オリビア    カトリーヌ   カーラ     カレン     キャサリン   
クララ     クリスティーナ クリスティーヌ クリスティーン クレア     グレース    
グロリア    ケリー     サリー     ジェニファー  ジェーン    シャルロット  
シャーロット  シャロン    ジャンヌ    ジュリアンヌ  ジュリエッタ  ジョイス    
シルビア    シンディ    スザンナ    スザンヌ    ソフィー    ダイアナ    
テレーズ    ナタリー    パトリシア   パメラ     フラン     フランシスカ  
フランソワース ヘレン     マーガレット  マチルダ    マリア     マリアン    
マルガリータ  メアリ     リディア    リリアン    ルイーザ    ロクサーヌ   
ロザーナ    ローラ     ロレイン    ロレッタ    ヴィオレッタ  ヴィクトリア  

A型
パ行音、拗音、促音、長音、「ヴ」、「ヂ」、「ヅ」、「ヲ」を除く任意のカタカナ1文字〜3文字
(1文字目のみ「ン」不可)

ディア リス リーナ レット レーテ

 西欧の女性名もC型だ。相変らず英仏独の名前がごちゃ混ぜにされている。まあ、これも「脳内補完」でどうにかすればいいだけの話だが。


awakの『蒼き狼と白き牝鹿』資料室に戻る